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  • 2011.12.25 Sunday
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「プライシング」について

JUGEMテーマ:ビジネス書
 >> はじめに
>> 第1章 プライシングはここから始まる
>>  モノ、サービスのバリューを評価する
>>  バリューと企業価値の均衡点を探る
>>  バリューによって市場を定義する
>>
>> 第2章 プライシングがなぜ必要なのか
>>  最大かつ最重要の利益の決め手である
>>  競合他社への強烈なメッセージやシグナルである
>>  価格自体がバリューの訴求手段である
>>  プライシングは戦略のすべての要素に影響を及ぼす
>>
>> 第3章 プライシングの基本を押さえる
>>  商売の基本に回帰する
> バリューに対していなやかに反応する
> 商いの知恵がものをいう
> 日本は市場経済の後進国なのか
> 経済合理性に適った行動の誘発が市場経済の発展を促す
>>  基本原則1 バリュー多様性の原則
> 顧客によるバリューの違いを理解する
同一と見なされるモノ、サービスであろうと、
顧客ごとに求めるバリュー、感じるバリューは大きく異なる。
前述した、ヨーロッパ車の日本向け価格設定で見てみよう。
乗用車を会社の固定資産として減価償却できる自営業の顧客にとっては、
自動車を保有し利用する経済的な意味が、
そうでない人、たとえばサラリーマンのそれと比べてまったく異なる。
たとえば、次から次へと自動車を買い替えるある会社経営者は、
「利益はどうせ税金に取られてもったいないから、
その分を車に使っている」と言う。
ある開業医は、「メルセデス・ベンツで往診することはないが、
高額な車は医者の経費として認められている」と内情を語る。
ある建設事務所の経営者は、
「車の購入費用を経費で落とせることくらいしか良いことがないから、
外車に乗っている」そうだ。
自動車に要する経費は、減価償却費として毎年の収益から控除できるので、
大きな負担にならない。
むしろ、税金をたくさん取られるよりは儲けを減らしたほうがよいといった考えから、
高級車に金を注ぎ込むインセンティブが働く。
したがって、このタイプの顧客の価格感度は低く、
少しでも安く手に入れようというインセンティブは比較的小さい。
たとえば同じメルセデス・ベンツに対しても、
顧客ごとに値ごろ感は大きく変わってくるのである。
一方、自動車という商品にとって、希少性は重要な属性である。
高価であるために、それだけの支払い能力のある顧客にしか手に入れられない。
つまりオーナーシップが限定されているからこそ、バリューになりうる。
いわゆるステータスシンボルと称されるものである。
高額なメルスデス・ベンツを購入した顧客の多くは、
ドイツでは日本より安く買えることも、アメリカにおいてすら日本より安いことも知っている。
にもかかわらず、顧客は「日本でのメルセデス・ベンツ」に大枚を投じている。
顧客の一部はドイツでベンツは買わないだろうし、
日本での価格が数百万円安くなってしまったら他の高級車に乗り替えるだろう。

「プライシング」について

JUGEMテーマ:ビジネス書

 >> はじめに
>> 第1章 プライシングはここから始まる
>>  モノ、サービスのバリューを評価する
>>  バリューと企業価値の均衡点を探る
>>  バリューによって市場を定義する
>>
>> 第2章 プライシングがなぜ必要なのか
>>  最大かつ最重要の利益の決め手である
>>  競合他社への強烈なメッセージやシグナルである
>>  価格自体がバリューの訴求手段である
>>  プライシングは戦略のすべての要素に影響を及ぼす
>>
>> 第3章 プライシングの基本を押さえる
>>  商売の基本に回帰する
バリューに対していなやかに反応する
 商いの知恵がものをいう
 日本は市場経済の後進国なのか
 経済合理性に適った行動の誘発が市場経済の発展を促す
>>  基本原則1 バリュー多様性の原則
ト−タルのバリューを変えれば価格差の説明はつく
  基本原則2 一物多価の原則
 七つの購買・消費パターン
バリューが変われば、価格が変わっても不思議はない。企業側からしても、
異なるバリューに異なる価格を平然と受け入れている。
「自分は一物一価の信奉者であり、そのようなことは断じてない」
という読者もいるかもしれないが、
実はこの事例はみなさんの周辺にいくらでも転がっている。
たとえば、一杯のコーラである。
350ミリリットルの太い缶に入ったコーラの例で見ると、
実に多くの価格が存在している。
それは、単なる特売時と平常時の価格差だけではない。
七つの購買-消費パターンである。
第一に、「娯楽や食事の一部として買って飲む」パターンである。
この囲い込まれた領域それ自体が大きな付加価値を伴っている場合、
たとえば、レストランに入ってコーラを飲む場合、
カラオケボックスでコーラを飲む場合、
あるいはディズニーランドでコーラを飲む場合は、
消費者はより高い価格を支払っている。
必ずしも缶入りコーラではないが、
一杯300円、400円といった価格はめずらしくない。
第二に、「ある囲い込まれた領域で買って、
その場で飲む」パターンである。
病院や学校、美術館といった特定の施設内にある自動販売機で買って飲むと、
屋外の自動販売機の価格とは異なる場合が多い。
会社などで福利厚生を考えて110円と安く提供される場合もあれば、
130円、150円とやや高くなる場合もある。
いずれにしても、ある囲い込まれた領域内でコーラを飲みたければ、
消費者は競争を免れた価格に従わざるをえない。
第三に、「外で買って、その場ですぐ飲む」パターンである。
夏の暑い日に外回りの営業の合間に、
道路際に設置してある自動販売機で買って飲めば、120円である。
以上は、コーラを買った場所で消費するパターンだが、
それ以外の購買-消費パターンとして、
「外で買って家で飲む」、いわゆるテイクアウトがある。
実はそれにもいろいろな価格がある。
第四に、「いま必要だから買いに行って、家で飲む」パターンである。
いま、急にコーラが飲みたくなったので近くのコンビニエンスストアで買い求め、
家で飲むと112円である。屋外の自動販売機よりも少々安い。
第五に、「毎晩夕食時に、家で飲む」パターンである。
もう少し計画的に、母親が夕飯の買い物に出向く近隣の食品スーパーで、
家族の好きなコーラを買うとする。たくさんは重たいので二〜三本買う。
スーパーマーケットではコンビニエンスストアより安い価格で売られていることが多いので、
たとえば110円で手に入れることができる。
第六に、「週に一度まとめ買いをして、家で飲む」パターンである。
休日になると、家族で少し離れたダイエーやイトーヨーカ堂に自動車で出かける。
洗剤などストックしておくものは近隣の雑貨店より安いし、
ステーキ用の肉などはまとめ買いをしておくほうが経済的だ。
駐車場の完備したGMS
(ゼネラル・マーチャンダイジング・ストア:全売上高に占める食料品の割合が50%以下の大型スーパーマーケット)では、
さっそく息子が六缶パックのコーラの特売を見つけ、一缶当たり100円程度で買う。
かさばるものや重いものは自動車で運ぶほうが楽なので、週末にまとめ買いをする。
第七に、「ディスカウント商品を大量に買い置きして、家で飲む」パターンである。
最近増えてきたディスカウンターで購入する場合である。
新聞の折り込みチラシを見て特定商品に狙いを定め、やはり自動車で買いに行く。
コーラが特売であれば、一ケース24本入りが最も安く買える。一缶なら80円でも買える。
ただし、常にコーラが特売とは限らない。
このパターンは、たいてい月に1〜2回の頻度が限度である。
七つの購買-消費パターンごとにコーラの販売価格が大きく変わっているのは、見たとおりである。最初のほうが高く、最後のほうほど安い。いますぐここで飲みたい、

という欲求が切実であればあるほど高い価格を受け入れ、購買と消費の間に余裕があればあるほど低い価格を要求する。
また、購入のボリュームが増えれば増えるほど低い価格を要求する。
つまり、「販売価格=消費者が受け入れた価格」であり、

これらの価格差は、消費者の需要、求めるバリューに応じた対価の差異
と考えることができるだろう。
きわめて理に適った購買行動とそれを反映したプライシングと言える。
日本全国で消費されるコーラの量を100として、
これを七つの購買-消費パターンに定量的に分類し、
さらに縦軸にパターンごとの平均価格を設定してみると、
インダストリー・コスト・カーブならぬ「インダストリー・プライス・カーブ」が描かれる。
インダストリー・コスト・カーブとは、
特定の商品カテゴリー、特にコモディティとして生産される全量を、
単位当たりコストの順に階段状に並べたチャートである。
これは一般的に生産者や生産設備ごとに区分され、
長方形の面積の総和がインダストリーの売上げの総和であり、
購買パターンごとにバリューに合わせて価格を設定する重要性が一目瞭然だ。
同時にこの図は、囲い込まれた市場の開拓の重要性についても示唆している。
コーラの例には、メルセデス・ベンツの例とは大きく異なる教訓がある。
それは、同一人物であっても、購買-消費の場面(オケージョン)が違えば
異なる価格を支払う用意があることだ。
スーパーマーケットでは一定以上のディスカウントがなければ買わない客であっても、
いますぐ飲みたいとなれば20%程度高い価格でも気にしない。
仮にいますぐ飲める冷たいコーラの数が限定されていれば、
いますぐ飲みたい消費者がより高い価格を提示することによって、
価格がつり上がるというケースも起こりうる。
その同じ消費者が別のオケージョンに遭遇した時、
たいして飲みたくなければコーラに見向きもしないだろう。
市場はそういうものなのだ。
さらに、同じ消費者がコーラの価格に細かいからといって、
他の消費財、たとえば歯ブラシの価格についてどう考えるかはまったく別の話である。
価格が品質のバロメーターであると思っていれば、
小売店の棚で最も高価な歯ブラシを躊躇せずに買っていくであろう。
歯ブラシは、コーラのような頻度で買わないから少々高くても懐が痛まない
と思っているかもしれない。
ドラッカーは「創造する経営者」(ダイヤモンド社)で次のように述べている。
アメリカの主婦は、食品を買うときと口紅を買うときとでは、別人のように行動することから、
心理学のたわごとが並べられている。
一家のために毎週食料を買い入れる主婦は、価格を意識する。
五セント安い特価品があれば、なじみのブランドも見捨てる。
当然である。主婦は、専門家、すなわち一家の総支配人として食料を買う。
しかし、口紅をそのように買う女性と結婚したいと、だれが思うだろう。
まったく異なる二つの役割において、
同一の基準を使わないことこそ、合理的な人間にとっての唯一の合理的な態度である。
要するに、バリューは、顧客一人ひとりに固有に決まっているわけではない。
人、あるいは顧客セグメントによって異なるだけではなく、
購買や消費という行動によって何を満たしたいのか、
その場面(オケージョン)によっても大きく変わる。
バリューが変われば、顧客が対価として適正であると感じる価格も変わるのだ。
市場価格の変動とは、そのような需要側の欲求と供給側の目論見が相互に火花を散らし
ながら均衡点を見出していくプロセスである。


「プライシング」について

JUGEMテーマ:ビジネス書
 >>  基本原則4 バリューのパッケージングの原則
> 異なる価格をパッケージングする
オケージョンの相違によるバリューの違いは、必ずしも所与のものではなく、
企業が新しくつくり出すことも可能である。
顧客の行動を日ごろ観察して、
どういう満足を求めているのか、洞察することで実現できる。
たとえば、サングラスである。まぶしい晴天の時(オケージョン)に、
眼を射る直射日光を防ぐという効用(ベネフィット)を得る
ために装着するのが一般的だが、
人に顔を見られないという別の効用に着目すれば、
外出時一般という頻度の高いオケージョンが想定される。
このようなオケージョンで利用する場合には、
サングラスのバリューは天気にはあまり左右されないので
(天気が悪いと外出の出足が鈍るという点では、影響がないとは言えないが)、
日焼けだけを想定したプライシングとは大きく変わってくる。
コーラの場合も同様に、顧客の購買-消費パターンが異なるのは所与ではない。
新しいバリューを提供する新しいチャネルが次々に発達してきたからこそ、
顧客の使い分けが生じたのであって、
昔はコーラを売るのは生業のパン屋や食料品店だけであり、
現在ほど複雑ではなかった。
購買場面や消費場面といったオケージョンは、
もともと決まっているわけではなく、新たに生まれたり変化したりするものなのだ。
したがって、企業にすれば、いままで存在していなかった
オケージョンや競合他社とは違うバリューをいかにつくり出すかが重要課題になる。
きめ細かいバリュー、すなわちニーズを掘り下げれば掘り下げるほど、
それぞれのバリューに見合ったプライシングによって、利益を上げることが可能になる。
これは、言うのは簡単だが実行するのは難しい。
何が本当に潜在的価値、あるいは潜在的ニーズであるかを机の上で考えていても、
なかなか決め手は見つからない。
顧客にしても、いままで見たこともないモノ、サービスに対して「これが欲しい」などとは、
企業に教えることなどできるはずもない。
企業側は仮説に基づいてバリューをパッケージングすることで、
顧客にぶつけてみるしかないのである。
> 企業側の働きかけが多様なバリューを創出する
企業側の働きかけによってバリューの無数のバリエーションを生んだのが、
アメリカの航空業界のプライシングである。
結論から言えば、同じフライトの同じクラスの隣り合った席に座る乗客が、
同じ運輸サービスに対して違う価格を支払っている。
日本でも、国際便のノーマル航空券とパック旅行や
安売り航空券の価格差はたいへん大きいし、
国内便にも事前購入割引やビジネス割引などがある。
この事実はいまや周知のものだが、クレームの嵐は起こっていない。
価格の違いが、広く顧客に受け入れられている証左である。
いったん顧客に受け入れられると、
同じフライトの隣り合った座席であっても同じモノ、サービスとは呼ばれなくなる。
一ヶ月前に航空会社の売上げを保証するという「協力」と引き替えの割引航空券と、
いっさい余分なコストがかからず土壇場でキャンセルできる航空券とでは、
明らかにバリューが異なる。
最近では、インターネットで予約して発券を省略し、
空港で直にボーディングパスを手に入れると安くなったりもする。
同じと思っていたモノ、サービスを、
ネットの運賃、予定変更のオプション、予約の容易さ、航空券入手の容易さなど
に分解することができる。
顧客は、航空会社が提供するさまざまなバリュー・パッケージのなかから、
自分が欲しいものを選んでその対価を支払っているのだ。
> フレキシブルな価格提携をつくる
残念ながら、昨今の航空不況で、
また一つ往年の成功物語が語りにくくなってしまった。
アメリカにおける航空業界の規制緩和は、
情報システムの革新と相まって、プライシングの一つのモデルを生んだ。
カスタマー・リザベーション・システム(CRS)
の元祖であるアメリカン航空の「セーバー・システム」は、
過去の実績値の分析に基づいて、
きめ細かい需要予測と座席の売れ行き状況を確認することで、
そのつど価格を変化させるフレキシブルなプライシング・スケジュールを完成させた。
搭乗日のかなり前から利用を決め、
キャンセルの場合には違約金を支払うことに同意した顧客には、
安い価格を提示した。
一方、直前まで予定が変わるリスクのある顧客には、
違約金を取らない代わりに割高な価格とした。
航空業を装置産業あるいは固定費ビジネスとして見た場合、
その特性に対応して、
稼働率のギャランティに顧客自身が貢献するインセンティブを付与したのである。
顧客側には、「搭乗日よりもかなり前に航空券を買っておきたい」
というセグメントが存在していたわけでも、
購買パターンが示されていたわけでもない。
航空会社の働きかけに顧客が反応したのだ。
搭乗日や搭乗便を変更することができない分、
通常の航空会社よりも多少不便な商品である。
低価格の理由が明確であったために、
「同じ商品なのに、なぜ価格が違うのか」
といった疑問に拘泥することなく広く受け入れられたのだ。
競合他社に比べて顧客のメリットが大きい場合、価格は安くなる。
価格が安くなるのは、利用するチャネル・コストが低い場合、
顧客の即決によって早い時期に売上げが確定できる場合、
販売関連コストが低い場合などである。
たとえば小売店などで、現金で支払った場合のみディスカウントを適用するというケースだ。
クレジットカードで支払う顧客に比べて現金で買い物をする顧客は、
クレジットカード会社への手数料の分だけ低コストで済む、ありがたい顧客だからだ。
実際には、クレジットカード会社と加盟店間の契約では、
このような取引条件に基づく差別化は禁止されているらしいが、
顧客には納得感があるので大きなクレームになっていないようだ。

「プライシング」について

JUGEMテーマ:ビジネス書
 >>  基本原則5 プレミアム維持の原則
> 価格によってバリューを変える
これまで述べてきた四つの基本原則は、
いかにバリューに見合ったプライシングを実施するかがテーマだった。
次に、基本原則として述べておきたいのは、
価格自体がいかにバリューを生み出しうるかである。
第2章では、価格そのものがバリューの尺度となりうることを述べ、
飲料水やビデオカメラの例を取り上げた。
本章では、メルセデス・ベンツの高い価格が顧客を限定する機能を備えており、
またそれが商品価値に反映されていることを指摘した。
ここで特に強調しておきたいのは、価格が顧客を限定する機能を備えており、
またそれが商品価値に反映されていることを指摘した。
ここで特に強調しておきたいのは、価格がバリューの受容者側だけではなく、
提供者側の心理にも大きく働きかける要素になっていることである。
つまり、「つくり出すバリューが高いから価格も高くなる」
という論理が同時に成立する必要性である。
わかりやすく言えば、「良いものは高い」の逆は、「高いものは良い」である。
ところで、論理だけでは、逆は必ずしも真ではない。
この逆を真にするためには、努力が必要となる。
この努力が実って初めて、高級品やブランドの地位は定着する。
ある日突然、「高級ブランドでございます」と売り出したところで、
簡単には成功しないゆえんである。
> プライシングは従業員にドライブをかける
その意味では、第2章で紹介したバックスバーガーは格好の事例である。
競合他社より一ケタ上の価格となると、
「何かとんでもないバリューがなければ見合わない」と思うのが人の常である。
それが害虫ゼロを100%保証するというものである。
害虫を確実にゼロにする技術は、おそらく世の中に存在しない。
あれば、だれもが100%保証のサービスを提供できるはずだ。
絶対確実な方法論がないところでそれを顧客に請け負うのだから、
本来10倍の価格でもリスクに見合うかどうかは定かでない。
方法論としても、人知の限りを尽くしてベストな成果を達成する以外にない。
しかし、どこまでやればベストなのかと問われれば、
「害虫の数がゼロになるまで」としか答えられないわけで、
インプットとアウトプットの関係ははっきりしない。
このような会社の従業員はさぞかし途方に暮れるだろうと思いきや、実態は違う。
従業員とてこのように考える。
「とんでもないバリューを提供しなければ、
たかが害虫駆除に競合他社の10倍などという価格は見合わない」と。
そこで、100%保証こそ、
10倍の価格に見合う唯一のバリューだということに納得が得られる。
それを常に達成しなければ、
バックスバーガーは嘘つきになってしまうばかりか、
仕事がなくなり業界から葬り去られてしまう。
実は、この状況がサービスの担い手である従業員一人ひとりを鼓舞し、
気を引き締めさせ、思いもよらない力を発揮させる。
顧客に誇れるユニークな提供価値、
自らのプライドにつながる業界での特別な存在感、
そして失敗したらあとがないという緊張感、
このような感覚が従業員に最大限の能力、
あるいは火事場の馬鹿力をいかんなく発揮せしめる。
従業員の仕事に対する強烈なドライブをかけるのが
ブランドやプライシングであり、
高い価格のモノ、サービスが常に価格に対して恥ずかしくない
バリューを捻出するように維持されるのだ。
> バリューの提供者と受容者とのバランス
元来、事業とは、顧客を喜ばせることによって自分が喜び(収益を上げ)、
さらにもっと喜ばせるところに投資していくサイクルである。
事業が成功するということは、このサイクルが回り続けることだ。
したがって、継続性のあるプライシングとは、
バリューの受容者の欲求とバリューの提供者の努力とのバランスを図るものであり、
顧客に対する一方的な働きかけではない。
と考えるのが自然である。
実は、戦略系コンサルティングと呼ばれる一群の企業が提供する
マネジメント・コンサルティングにも、同じようなバリューと価格の関係が存在する。
このビジネスは、企業のカンサルティングを通じてもたらした収益の向上分をベースに、
その何%かをフィーとして受け取る、というのが基本である。
通常、数億円から数十億円単位の収益向上を前提としており、
フィーのレベルは月に数千万円、プロジェクト当たりでは億の単位が普通である。
月に数千万ということは日に百万単位の金であり、
これがコンサルタント一人ひとりを奮い立たせるのだ。
コンサルタントの金銭感覚とて、読者のみなさんと同じである。
「日に百万もいただくからには、とんでもないバリューがなければ見合わない。
業界のだれもが言うような、通り一遍のことを提言しても顧客は満足しない。
コンサルタントの○△さんがいなければここまで来られなかったと、
顧客に感謝されなければダメだ」と自らにプレッシャーを与えるのだ。
どこにでもありそうな答えや、実行が難しい提案は、
顧客に言われるまでもなく自分でもわかる。
自分で自分の提言に納得できなくて破り捨てることも度々である。
成果が出なければ顧客はもう二度と戻ってきてくれないし、
悪い噂はあっという間に広がる。
これもまた、コンサルタントに獅子奮迅の活躍をさせる原動力となる。
もちろん、どこまでやればよいのか、
というようなクリティカルマスは客観的には定義できないのだが、
常に「この程度ではとても足りない」と自分自身のみならず、
プロジェクトのメンバーを叱咤激励する日々が続く。
これくらいにしておこう。
問題は、あなたの会社が「良いものは高い」という
プライシング戦略を選択するのであれば、
「高いものはやはり良い」ということを裏打ちするメカニズム
を構築しなければならない、ということだ。
そのようなダイナミックな状況のなかにこそ、
顧客側と企業側が共通に認識できるバリューと価格の均衡点が見出されるのだ。

「プライシング」について

JUGEMテーマ:ビジネス書
 >  基本原則7 妥当性訴求の原則
価格の正当性をアピールする
価格差が存在していても、その差が正当であれば顧客は納得する。
これまで述べてきたようなバリューによる価格の違い、
すなわち一物多価をきわめるためには、
正当性をどのようにアピールするかがカギになってくる。
この価格の正当性は、消費者の成熟化に伴って、ますます重要なテーマとなってきた。
日本の場合、バブルの狂らんとその後の価格破壊の経験が、
消費者にバリューと対価について相当考えさせる機会を提供したと言えよう。
バブル期には価格の高さにバリューを感じ、
価格破壊時代には安さにバリューを求めた消費者は、両極を経験した結果、
「価格は高い安いも大切だが、正当か否かも重要」と再認識した。
価格に対して”正当性”を求め始めるようになったのだ。
その主張を裏づけるのは、次の二つの観察である。
●価格破壊時代の主役の凋落
価格破壊をリードしたディスカウントストアとプライベート・ブランドは
正当な安さを目指し、全体の価格水準を下げる役割を果たした末に、
かえってその競争力を失いつつある。
●最近のディスカウント販売への反応の明暗
大幅なディスカウントをしても、
「なぜ安いのか」という理由が明らかな商品の場合には消費者の支持が得られ、
その理由がよくわからない商品の場合には消費者の反発を招いている。
前者については、パソコンのステップ、オリンピックスポーツ、酒類のやまやなど、
有力ディスカウントストアが軒並み経営悪化に陥った。
当初は顧客が絶大に支持した「安売りの仕組み」による「正当な安さ」だったが、
仕入れの合理化やロー・コスト・オペレーションが他の小売業にも普及してきたために、
もはや競争力の源泉とはならなくなったのだ。
また、プライベート・ブランド商品の場合、
1995年末には洗剤で16%のシェアを占めていたのに対して、
翌96年は5%前後に急減した。
シェア獲得の標的にされたナショナル・ブランド商品も、
顧客に納得される価格差の範囲に値下げをしてきた。
すなわち、正当な価格を取り戻したことでプライベート・ブランドの役割は終わった。
後者については、携帯電話やPHSの乱売は顧客に歓迎されたという。
販売価格1円といった激安商法であっても、
「ただ同然で売っても、基本料・通話料で通信会社は儲かる」
という理解が浸透していたために、うさん臭さを感じる顧客はあまりいなかったそうだ。
対照的だったのが、航空券の事前購入割引だ。
搭乗日の2〜4週間前に購入すれば最大50%引きという場合もある。
利用者側の「利益」はけっして小さくないにもかかわらず、反感を買ってしまった。
その理由は、往復割引の廃止と引き換えだったことや、
対象座席数の公表を渋るなど、企業側の対応のまずさも一因だが、
それ以上に「なぜ事前に買うと安いのか」について
利用者が十分理解できなかったことが大きな理由だった。
同じ割引でも、季節割引や早期割引には、
繁閑の波を平準化する意図であることがわかる。
しかし、事前購入割引が導入された理由としては、
需要予測が情報になるくらいしか考えられないから、「5割引」に相当するとは思えない。
一見スーパーの目玉商品に似ているようだが、
目玉商品にはたとえそれで赤字を出しても、
客数が増え売上げが伸びることによって利益を上げる計算が背景にある。
消費者はそれを知っているから安心して買う。
しかし、事前購入割引にはそうな「正当性」がないため、
料金体系そのものに不信感を抱かれてしまった。

理屈が通れば顧客は納得する
顧客の声は根強く、産業界も価格の「正当性」に対応している。
1998年になると、公明正大な価格という意味で
「ワン・プライス制度」を模索する企業が増えた。
これは自動車メーカーなどが、
大幅なディスカウント販売が当たり前という潮流のなかで、
バリューと価格のバランスがとれた「適正価格」を再構築しようと導入し始めたものだ。
参考までに、日経流通新聞98年4月28日付の記事を抜粋して内容と背景を紹介しよう。
(中略)
大幅な値引きが横行すると消費者は
「同じ商品を他人はもっと安く買っているかも知れない」と疑心暗鬼になってくる。
ワンプライスは利益確保だけでなく、
透明性を高めて価格への信頼を回復する足がかりにもなろう。
むやみに安売り競争に走るより、
実需に適した価格を最初から自信をもって打ち出すことがメーカーに求められよう。

ここにあるように、顧客が払拭してもらいたいのは、
「不当に高く買わされているのではないか」という不安である。
「不当」と感じるのは、理屈が通らない場合だ。
したがって、ある状況ではワン・プライスでなくとも、けっして不当ではない。
たとえば、同じ商品を大量に買ったり、何回も繰り返して買っている顧客は、
そうではない顧客よりも「良い条件」を欲するのが常である。
彼らは他の顧客よりも低い販売コストでより多くの利益を売り手にもたらすがゆえに、
その要求は理に適っている。
このような場合には、企業は購入量に連動して
安くなる価格体系を公明正大に示せばよいのである。
なるほどと思える理屈が示されれば、価格の正当性は必ずアピールできる。
ドラッカーが指摘するように、顧客に届けているのは満足である。
顧客が何をもって満足感を得るかは千差万別である。
人それぞれに異なるバリューを届ける世界は、
新聞記事が好む「べき論」だけでは簡単に処理できない。
記者や評論家がものごとを概観して「こうあるべし」と唱えるのと、
企業のスタンスは違う。
企業は、バリュー・クリエーションの継続に責任がある。
顧客にバリューの提供を通じて働きかけながら、
顧客を惹きつけ企業価値を生み続ける均衡点を見出すのだ。
最後は、顧客と企業の間にそのような信頼関係が成り立つことが、あらゆる批判を論破する。
将来は、あらゆる企業が、顧客に届けるバリューを原点に、
なぜ顧客ごとにモノ、サービスが異なる方法や価格で届けられているのか、
それを雄弁に説明できることを期待したい。

「プライシング」について

JUGEMテーマ:ビジネス書
 > 第5章 プライシングの分析手法を理解する
>  ☆ポケット・プライス
>    取引の真の実態を測定する
第一の分析手法は「ポケット・プライス」である。
これこそまさにプライシングの実態を把握する第一歩だ。
日々の何百という個別取引について、
商品ごと、顧客ごと、注文ごとの最終的な取引価格を確認する作業が要求される、
きめの細かい分析手法である。
その目的は、不適切なプライシングを排除し、取引ごとに適正な利益を確保することにある。
実は多くの企業では、それほど細かく情報を逐次に管理しているわけではなく、
取引の数があまりにも多くて全体として複雑なために、
個々の取引場面の細部では時に的はずれなプライシングをしてしまう。
顧客と価格を取り決めている営業部門ですら
取引価格の平均値や全体額をおおまかに把握しているだけ、という場合も多いのだ。
そのような企業において経営トップがプライシングの実態を理解するのは不可能に近い。
経営トップがその実態を見れば、どれほどプライシングに幅があり、
どれほど多くの取引で損をし、どれほどムダな金を使っているかを知って驚愕することだろう。
ポケット・プライスは、これらの実態を白日の下にさらけ出す分析手法とも言える。
ポケット・プライスとは、その取引の結果として
企業のポケットに最終的に残った実質的な収入のことを指す。
従来の伝票価格から脱皮して、取引の真の魅力を測るモノサシたらんとするものである。
たとえば、アメリカの床材メーカーの対小売店販売における典型的な価格体系を示すと、
そこにはポケット・プライスを左右する
多くの金の流れ(ディスカウント)が関係していることが見て取れる。
まず、「基準ディーラー価格」から始まり、
そこから「オーダー・サイズ割引」(オーダーごとのボリューム・ディスカウント)と
「競合割引」(競合状況を意識してメーカーが提示したディスカウント)
を差し引いたものが「伝票価格」である。
これが通常、企業が基準として用いる価格である。
ところが、流通を介して販売する事業では、
伝票価格は取引の実態を必ずしも反映していない場合が多い。
伝票価格とポケット・プライスとの間には、即時払い割引、
全体取引ボリュームに対するインセンティブ、
共同広告協賛金などがあり、
これらすべての要素を差し引いた残りが、
ポケット・プライスとして比較検討されなければならない。
この床材メーカーの場合、従来は一連のディスカウントをはじめ、
各種インセンティブを含む価格体系を採用していた。
ディーラーが30日以内に支払いを済ませた場合には5.2%の支払い条件割引、
ディーラーの年間購買量に応じた6.4%までの年間ボリューム・ボーナスの提供、
小売業者が広告で同メーカーの製品を取り上げた場合は3.5%の共同広告協賛金の支払い
などに加えて、一定金額以上のオーダーのある全小売業者に対して
運送費を全額負担していた。
これらインセンティブの一つひとつは、それほど大きなマイナス要因ではないが、
合計した場合の伝票価格とポケット・プライスとの格差は22.7%と大きい。
このような事業がありながら、
経営トップが個別取引レベルのプライシングに焦点を当てて問題解決に当たっていないのは、
それぞれの企業の会計システムが、
伝票価格以降の多くのディスカウント項目を顧客別、
または取引別に集計していないからである。
たとえば、支払期間に関するディスカウントは支払利息の項目にあり、
共同広告協賛金は広告宣伝費のその他の雑費用に計上され、
特定顧客への運送費負担分の一部は、自社内の運搬・物流費にまとめられている。
これでは、どの顧客との取引で、どれくらい儲かり損しているのかがわからず、
何をどう変えればよいのかが判然としない。
問題の所在がわからなければ、営業担当者の顧客への対応が変わるわけはない。
ディスカウント幅の増額や協賛金の積み増しを小売店から依頼され、
それらの要求に個別に対応するうちに、全体の利益はますます小さくなっていくのだ。
>    ポケット・プライス・ウォーターフォール
図表27は、「ポケット・プライス・ウォーターフォール」と呼ばれる。
基準ディーラー価格からポケット・プライスまで、
価格が滝のように落下して目減りしていく様子を表しているからだ。
かつてマッキンゼーがアメリカで行った調査によれば、
このような価格の目減りはあらゆる業者に共通して見られ、
大きな業界では実に30%、小さい業界でも約20%のギャップが存在していた。
今日の日本企業においても、
独立の流通ルートでモノ、サービスが販売される事業は多いが、
商品、顧客、取引別に発生する金の流れのすべてを把握しているケースは少ないだろう。
組織が大きく分業態勢になって取引規模が拡大すれば、
一人の人間がそのすべてを把握するのは難しくなるため、
プライシングを考える部門で金の流れをどこまで把握できるかがカギになってくる。
最新式の情報システムを導入する企業が安泰かと言えば、そうではない。
商品、顧客、取引別の金の流れに関する情報をシステム管理するには、
それ以前の業務プロセス、
たとえば共同広告協賛金を独立して顧客別に計上するなどの
人力作業が新たに必要になる。
場合によっては、情報システムで仕事が簡単かつスピーディになるのではなく、
余分な仕事が増えることさえある。
これだけの負荷を伴なう作業が必要なだけに、
真の価格に対する問題提起は、なかなか内部からは生まれてこない。
また、外部から招かれた情報システムの専門家にしても、
取引別の情報を把握することが重要な課題であると認識していなければ、
課題克服を目指した情報システムを提案することもできない。
>    物流・配送部門のコストの計上費目を誤る
日本のある加工食品会社では、ポケット・プライスを把握していなかったために、
まったく逆の対応を取ってしまった。同社の販売先は、
主に食料品店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどである。
同社は、昔ながらの食料品店こそ実は大きな利益源であり、
近年増加の一途をたどるスーパーマーケットやコンビニエンスストアは、
利が薄い割に全体に占める割合が年々高まっていたので苦々しく思っていた。
営業担当者は、付き合いの長い食料品店に対しては手厚い対応を取り続け、
スーパーマーケットが呼びかけるプロモーションやキャンペーンに対しては消極的だった。
結果として、スーパーマーケットなどにおける同社商品のインストア・シェアは落ち込み、
同時にそれらの販売先の相対的割合が高まったことでダブル・パンチに見舞われた。
ところがポケット・プライスを子細に分析してみると、
意外な事実が判明した。
物流・配送部門のコストについては長い間の慣習から固定費的な扱いをしており、
それを必要としないチェーン展開のスーパーマーケットや
コンビニエンスストアにまで売上按分で割り振っていたのである。
特に大きなシェアを占める全国チェーンのスーパーマーケットなどは、
独自の物流センターを有し、各店への配送は自社対応しているので、
メーカー側の物流コストはきわめて小さい。この部分が評価されていなかったため、
スーパーマーケットなどは、実際よりも儲からないと見られていたのだ。
一方、食料品店に対しては、
販売価格が相対的に高く販売量は限定されているにもかかわらず、
大きなリベートや協力金が支払われていた。メーカーが売上げを増やすために
販売する店舗に協力を依頼する「ディスカウント商品」のリベートは、
スーパーマーケットやコンビニエンスストアには通用しにくいからだ。
地域チェーンや全国チェーンを展開する組織では、
地域ごとにマーチャンダイジングの責任者が配置され、
店長の権限が限定されている場合が多く、
リベートを原資にしたディスカウントも簡単には実行できない。
せっかく予算として獲得したリベート経費も、使わないことには減らされる。
数が減少している食料品店に必要以上の金が回っていたのである。
同社の場合、ポケット・プライスを正確に分析してみると、
ネット価格(儲け)の現状は、社内常識とまったく逆であった。
現在の方向性とは正反対に、食料品店へのリベートを減らし、
スーパーマーケットやコンビニエンスストアとの協力関係を積極的に構築していくことこそ、
同社に必要な施策であった。
また、将来のチェーンの成長を考えると、
自前の物流・配送部門を迅速に合理化することも重要な経営課題であることがわかった。
>    ポケット・プライス・バンド
顧客ごと、取引ごとにポケット・プライス・ウォーターフォールを見たあと、
分析しておきたいのが「ポケット・プライス・バンド」である。
これは、個別取引の分布図であり、
どの価格でどのくらいの量を販売しているのかについて、価格の幅や分散の程度を見るものだ。
すべての顧客に常に同じポケット・プライスで販売されているわけではないので、
同じモノ、サービスが、ある価格の幅をもって販売されるのは当然である。
具体的なプライシングの改善に際しては、
このポケット・プライス・バンドを把握することによってターゲットを絞り込んでいく。
前述したアメリカの床材メーカーの、
ある商品の1ヤード当たりの金額についてポケット・プライス・バンドを描いてみると、
多くのことがわかる。
まず、最高価格と最低価格の差である。
これは他のケースと比べてもけっして大きくはない。
一物一価を標榜している企業ですら、実際の取引価格ではバリエーションがある。
この幅に問題があるわけではないが、
大きな割引率で取引されている割合が一目瞭然なので、
勘の良いマネージャーであればこの幅の改善に利益拡大の可能性を見出すだろう。
次に、価格の幅の広さの原因を突き止める。
たとえば、高価格帯域はロット・サイズが小さく、
かつリードタイムの短いエクスプレス・デリバリーの注文であり、
低価格帯域はグローバル・アカウント
(世界中で取引のある得意先)の大量ロットの注文であるならば、理に適っている。
ところが、数多くの取引のなかには、まったくつじつまの合わない価格が存在している。
このような価格を見つけ出し、修正することによって、
大きな収益がもたらされるのである。
そこで、バンドの両端にどの顧客が位置しているのかを見きわめるのが、
次のステップとなる。
利益が高いと考えられていた顧客が低いほうに現れたり、
逆に、利益が低いと思われていた顧客が高い価格を支払っているのはだれなのか、
低い価格を提供している相手はだれなのかを明らかにする。原因究明作業に着手するわけだ。
該当する顧客が判明したら、なぜそのようなリベートや協力金を払っているのか、
社内の営業担当者に経緯を聞いてみる。
これまでのそれぞれの局面における営業担当者の行動のなかには、
売上期待が甘く大きなディスカウントを提供してしまったケースや、
顧客との付き合いから断りきれずに協力金を追加したケースなど、
特異値が出てくる。
これらの塵が積もり積もって山となり、
ポケット・プライスで見ると納得のいかない低価格となっているのだ。
この原因究明のステップで、顧客のニーズや営業担当者の配慮などを厳しく色分けしていくと、
本当に低価格でなければ取引が成立しそうにない顧客なのか、
実はもう少し高い価格を支払ってもよいと思っている顧客なのかが明らかになってくる。
ここまでくると顧客ごとの対応策が見えてくるが、
もう一つの関門が待っている。
それは、企業の営業体質である。売上げの歩合が成績となり、
自分の顧客からの売上げをいかにして守るかという意識が染みついている企業の場合、
それまで培ってきた顧客との関係に大ナタを振るうことは難しい。
会社の方針で変更を押し切るしかない場合もある。
個別取引レベルといえども、プライシングは販売・営業担当の課題ではなく、
経営トップの重要課題と述べるゆえんである。
個別取引レベルのプライシングが得意な企業では、
ポケット・プライス・バンドの両端10〜20%に位置する顧客や取引をターゲットに選び、
マーケティングと営業の施策に結びつけている。
高い価格で取引している顧客のなかには、
スイッチング・コスト
(特定のモノ、サービスに関して提供者を変更する時に発生する費用や手間など)が高いために、
取引価格への感度はもともと低い、という顧客がいる。
一方、ディスカウントを実施することによって取引量の拡大を期待できる顧客もいる。
この場合には、量の拡大について交渉する、
という比較的ローリスクの対策をただちに実行することができる。
一方、低い価格で取引に見合うメリットがある顧客とそうでない顧客が混在している。
将来、取引が拡大する可能性のある顧客やイメージ・リーダー的な顧客の場合には、
他の顧客への波及効果の可能性などについても検討してみる余地がある。
この見きわめを素早く実施して、どちらの条件にも当てはまらない顧客については、
値上げもしくは取引停止という明確な姿勢で臨むのである。

「プライシング」について

JUGEMテーマ:ビジネス書
 > 第5章 プライシングの分析手法を理解する
>  ☆ポケット・プライス
>    取引の真の実態を測定する
第一の分析手法は「ポケット・プライス」である。
これこそまさにプライシングの実態を把握する第一歩だ。
日々の何百という個別取引について、
商品ごと、顧客ごと、注文ごとの最終的な取引価格を確認する作業が要求される、
きめの細かい分析手法である。
その目的は、不適切なプライシングを排除し、
取引ごとに適正な利益を確保することにある。
実は多くの企業では、それほど細かく情報を逐次に管理しているわけではなく、
取引の数があまりにも多くて全体として複雑なために、
個々の取引場面の細部では時に的はずれなプライシングをしてしまう。
顧客と価格を取り決めている営業部門ですら
取引価格の平均値や全体額をおおまかに把握しているだけ、という場合も多いのだ。
そのような企業において経営トップがプライシングの実態を理解するのは不可能に近い。
経営トップがその実態を見れば、どれほどプライシングに幅があり、
どれほど多くの取引で損をし、
どれほどムダな金を使っているかを知って驚愕することだろう。
ポケット・プライスは、これらの実態を白日の下にさらけ出す分析手法とも言える。
ポケット・プライスとは、その取引の結果として
企業のポケットに最終的に残った実質的な収入のことを指す。
従来の伝票価格から脱皮して、取引の真の魅力を測るモノサシたらんとするものである。
たとえば、アメリカの床材メーカーの対小売店販売における典型的な価格体系を示すと、
そこにはポケット・プライスを左右する
多くの金の流れ(ディスカウント)が関係していることが見て取れる。
まず、「基準ディーラー価格」から始まり、
そこから「オーダー・サイズ割引」(オーダーごとのボリューム・ディスカウント)と
「競合割引」(競合状況を意識してメーカーが提示したディスカウント)
を差し引いたものが「伝票価格」である。
これが通常、企業が基準として用いる価格である。
ところが、流通を介して販売する事業では、
伝票価格は取引の実態を必ずしも反映していない場合が多い。
伝票価格とポケット・プライスとの間には、
即時払い割引、
全体取引ボリュームに対するインセンティブ、
共同広告協賛金などがあり、
これらすべての要素を差し引いた残りが、
ポケット・プライスとして比較検討されなければならない。
この床材メーカーの場合、
従来は一連のディスカウントをはじめ、各種インセンティブを含む価格体系を採用していた。
ディーラーが30日以内に支払いを済ませた場合には5.2%の支払い条件割引、
ディーラーの年間購買量に応じた6.4%までの年間ボリューム・ボーナスの提供、
小売業者が広告で同メーカーの製品を取り上げた場合は
3.5%の共同広告協賛金の支払いなどに加えて、
一定金額以上のオーダーのある全小売業者に対して運送費を全額負担していた。
これらインセンティブの一つひとつは、
それほど大きなマイナス要因ではないが、
合計した場合の伝票価格とポケット・プライスとの格差は22.7%と大きい。
このような事業がありながら、
経営トップが個別取引レベルのプライシングに焦点を当てて問題解決に当たっていないのは、
それぞれの企業の会計システムが、
伝票価格以降の多くのディスカウント項目を顧客別、または取引別に集計していないからである。
たとえば、支払期間に関するディスカウントは支払利息の項目にあり、
共同広告協賛金は広告宣伝費のその他の雑費用に計上され、
特定顧客への運送費負担分の一部は、自社内の運搬・物流費にまとめられている。
これでは、どの顧客との取引で、どれくらい儲かり損しているのかがわからず、
何をどう変えればよいのかが判然としない。
問題の所在がわからなければ、営業担当者の顧客への対応が変わるわけはない。
ディスカウント幅の増額や協賛金の積み増しを小売店から依頼され、
それらの要求に個別に対応するうちに、全体の利益はますます小さくなっていくのだ。
>    ポケット・プライス・ウォーターフォール
「ポケット・プライス・ウォーターフォール」と呼ばれる。
基準ディーラー価格からポケット・プライスまで、
価格が滝のように落下して目減りしていく様子を表しているからだ。
かつてマッキンゼーがアメリカで行った調査によれば、
このような価格の目減りはあらゆる業者に共通して見られ、
大きな業界では実に30%、小さい業界でも約20%のギャップが存在していた。
今日の日本企業においても、
独立の流通ルートでモノ、サービスが販売される事業は多いが、
商品、顧客、取引別に発生する金の流れのすべてを把握しているケースは少ないだろう。
組織が大きく分業態勢になって取引規模が拡大すれば、
一人の人間がそのすべてを把握するのは難しくなるため、
プライシングを考える部門で金の流れをどこまで把握できるかがカギになってくる。
最新式の情報システムを導入する企業が安泰かと言えば、そうではない。
商品、顧客、取引別の金の流れに関する情報をシステム管理するには、
それ以前の業務プロセス、
たとえば共同広告協賛金を独立して顧客別に計上するなどの人力作業が新たに必要になる。
場合によっては、情報システムで仕事が簡単かつスピーディになるのではなく、
余分な仕事が増えることさえある。
これだけの負荷を伴なう作業が必要なだけに、
真の価格に対する問題提起は、
なかなか内部からは生まれてこない。
また、外部から招かれた情報システムの専門家にしても、
取引別の情報を把握することが重要な課題であると認識していなければ、
課題克服を目指した情報システムを提案することもできない。
>    物流・配送部門のコストの計上費目を誤る
日本のある加工食品会社では、ポケット・プライスを把握していなかったために、
まったく逆の対応を取ってしまった。
同社の販売先は、主に食料品店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどである。
同社は、昔ながらの食料品店こそ実は大きな利益源であり、
近年増加の一途をたどるスーパーマーケットやコンビニエンスストアは、
利が薄い割に全体に占める割合が年々高まっていたので苦々しく思っていた。
営業担当者は、付き合いの長い食料品店に対しては手厚い対応を取り続け、
スーパーマーケットが呼びかけるプロモーションやキャンペーンに対しては消極的だった。
結果として、スーパーマーケットなどにおける同社商品のインストア・シェアは落ち込み、
同時にそれらの販売先の相対的割合が高まったことでダブル・パンチに見舞われた。
ところがポケット・プライスを子細に分析してみると、意外な事実が判明した。
物流・配送部門のコストについては長い間の慣習から固定費的な扱いをしており、
それを必要としないチェーン展開のスーパーマーケットや
コンビニエンスストアにまで売上按分で割り振っていたのである。
特に大きなシェアを占める全国チェーンのスーパーマーケットなどは、
独自の物流センターを有し、各店への配送は自社対応しているので、
メーカー側の物流コストはきわめて小さい。この部分が評価されていなかったため、
スーパーマーケットなどは、実際よりも儲からないと見られていたのだ。
一方、食料品店に対しては、
販売価格が相対的に高く販売量は限定されているにもかかわらず、
大きなリベートや協力金が支払われていた。
メーカーが売上げを増やすために販売する店舗に協力を依頼する
「ディスカウント商品」のリベートは、
スーパーマーケットやコンビニエンスストアには通用しにくいからだ。
地域チェーンや全国チェーンを展開する組織では、
地域ごとにマーチャンダイジングの責任者が配置され、
店長の権限が限定されている場合が多く、
リベートを原資にしたディスカウントも簡単には実行できない。
せっかく予算として獲得したリベート経費も、
使わないことには減らされる。
数が減少している食料品店に必要以上の金が回っていたのである。
同社の場合、ポケット・プライスを正確に分析してみると、
ネット価格(儲け)の現状は、社内常識とまったく逆であった。
現在の方向性とは正反対に、食料品店へのリベートを減らし、
スーパーマーケットやコンビニエンスストアとの協力関係を積極的に構築していくことこそ、
同社に必要な施策であった。
また、将来のチェーンの成長を考えると、
自前の物流・配送部門を迅速に合理化することも重要な経営課題であることがわかった。
>    ポケット・プライス・バンド
顧客ごと、取引ごとにポケット・プライス・ウォーターフォールを見たあと、
分析しておきたいのが「ポケット・プライス・バンド」である。
これは、個別取引の分布図であり、どの価格でどのくらいの量を販売しているのかについて、
価格の幅や分散の程度を見るものだ。
すべての顧客に常に同じポケット・プライスで販売されているわけではないので、
同じモノ、サービスが、ある価格の幅をもって販売されるのは当然である。
具体的なプライシングの改善に際しては、
このポケット・プライス・バンドを把握することによってターゲットを絞り込んでいく。
前述したアメリカの床材メーカーの、ある商品の1ヤード当たりの金額について
ポケット・プライス・バンドを描いてみると、多くのことがわかる。
まず、最高価格と最低価格の差である。
これは他のケースと比べてもけっして大きくはない。
一物一価を標榜している企業ですら、実際の取引価格ではバリエーションがある。
この幅に問題があるわけではないが、
大きな割引率で取引されている割合が一目瞭然なので、
勘の良いマネージャーであればこの幅の改善に利益拡大の可能性を見出すだろう。
次に、価格の幅の広さの原因を突き止める。
たとえば、高価格帯域はロット・サイズが小さく、
かつリードタイムの短いエクスプレス・デリバリーの注文であり、
低価格帯域はグローバル・アカウント
(世界中で取引のある得意先)の大量ロットの注文であるならば、理に適っている。
ところが、数多くの取引のなかには、まったくつじつまの合わない価格が存在している。
このような価格を見つけ出し、修正することによって、大きな収益がもたらされるのである。
そこで、バンドの両端にどの顧客が位置しているのかを見きわめるのが、次のステップとなる。
利益が高いと考えられていた顧客が低いほうに現れたり、
逆に、利益が低いと思われていた顧客が高い価格を支払っているのはだれなのか、
低い価格を提供している相手はだれなのかを明らかにする。
原因究明作業に着手するわけだ。
該当する顧客が判明したら、なぜそのようなリベートや協力金を払っているのか、
社内の営業担当者に経緯を聞いてみる。
これまでのそれぞれの局面における営業担当者の行動のなかには、
売上期待が甘く大きなディスカウントを提供してしまったケースや、
顧客との付き合いから断りきれずに協力金を追加したケースなど、特異値が出てくる。
これらの塵が積もり積もって山となり、
ポケット・プライスで見ると納得のいかない低価格となっているのだ。
この原因究明のステップで、顧客のニーズや営業担当者の配慮などを厳しく色分けしていくと、
本当に低価格でなければ取引が成立しそうにない顧客なのか、
実はもう少し高い価格を支払ってもよいと思っている顧客なのかが明らかになってくる。
ここまでくると顧客ごとの対応策が見えてくるが、もう一つの関門が待っている。
それは、企業の営業体質である。
売上げの歩合が成績となり、
自分の顧客からの売上げをいかにして守るかという意識が染みついている企業の場合、
それまで培ってきた顧客との関係に大ナタを振るうことは難しい。
会社の方針で変更を押し切るしかない場合もある。
個別取引レベルといえども、プライシングは販売・営業担当の課題ではなく、
経営トップの重要課題と述べるゆえんである。
個別取引レベルのプライシングが得意な企業では、
ポケット・プライス・バンドの両端10〜20%に位置する顧客や取引をターゲットに選び、
マーケティングと営業の施策に結びつけている。
高い価格で取引している顧客のなかには、
スイッチング・コスト
(特定のモノ、サービスに関して提供者を変更する時に発生する費用や手間など)
が高いために、取引価格への感度はもともと低い、という顧客がいる。
一方、ディスカウントを実施することによって取引量の拡大を期待できる顧客もいる。
この場合には、量の拡大について交渉する、
という比較的ローリスクの対策をただちに実行することができる。
一方、低い価格で取引に見合うメリットがある顧客とそうでない顧客が混在している。
将来、取引が拡大する可能性のある顧客やイメージ・リーダー的な顧客の場合には、
他の顧客への波及効果の可能性などについても検討してみる余地がある。
この見きわめを素早く実施して、
どちらの条件にも当てはまらない顧客については、
値上げもしくは取引停止という明確な姿勢で臨むのである。

「プライシング」について

JUGEMテーマ:ビジネス書
 >>  ☆価格弾性
>>    価格変動と需要の関係を測る
> 第二の分析手法は「価格弾性」である。
価格の変動に対して需要はどのくらい弾性的なのか。
あるいは硬直的なのかを表す価格弾性値は、
教科書に必ず登場するプライシング関係の定番である。
 ここで、現実の世界を考えてみよう。
プロダクト・マネジャーであるあなたは、おそらく、
そのような時間とコストをかける余裕はないだろう。
また、これまでの事例で見てきたように、
顧客の値ごろ感や競合他社の反応も含めて市場は刻一刻と変化しており、
調査によって把握した価格弾性値は、たちまち過去のものとなってしまうリスクも存在する。
 ここでは、これまでの経験をもとに、現実にできること、
また、特に犯しがちな間違いを防止するという観点から、
モノ、サービスの特性、チャネルの特性、
および顧客セグメントの特性による価格弾性の違いについて理解したうえで、
簡単な価格弾性実験の方法とリベートの使い方の間違いについて取り上げる。
>>    商品別価格弾性
 価格弾性が、商品の特性によって大きく異なることは自明であろう。
その商品カテゴリーの主要な購買要因が、
価格なのか、ブランドや性能・品質なのかによって、
価格による需要の変動は違ってくる。
ただし、購買要因が価格であれば弾性値は高く、
価格でないならば弾性値は低いというような、単純なものではない。
注意しなければならないのは、企業によってまったく意味合いが異なることだ。
 たとえば、主要な購買要因が価格の場合、
当然、競合他社は価格の低さで競争をしている。
ここでは価格にクリティカルマスが存在していることが多い。
つまり、顧客がすでに低価格に値ごろ感を形成しているために、
ある価格以上ではまったく相手にされない「境界価格ゾーン」が存在する。
 その境界価格ゾーン周辺で低価格の商品が
入れ替わり立ち替わり販売量のトップの座を占めるため、
トータルで見れば大きなシェアの変化はないケースが多い。
逆に、境界価格ゾーン周辺で華々しいボリューム増を狙うのであれば、
下げ幅が目立つような価格を設定しなければならない。
よほどコスト競争力に自信がなければ選択できない行動である。
そうではない企業は、ただでさえ薄い利益をさらに失ってしまう危険性が高いので、
やめたほうがよい。
 ブランドや性能・品質といった購買要因が重要な商品カテゴリーの場合は、
通常価格で勝負しているわけではない。
低価格のプライベート・ブランドなどは、
ブランドなどをあまり気にかけない顧客をつかんでおり、
低価格にしたからといって、このような顧客のボリュームが大きく膨らむとは考えにくい。
 一方で、ブランドや性能・品質に優れた商品は、
通常価格が高い分、顧客は少額のディスカウントにも大きな反応を示すことがある。
ブランドなどの価格に対する割安感が、購買を刺激するのだ。
 価格で勝負する必要性が低い企業ほど、
実は価格を有効に使った戦略を立案できるのである。
>>    チャネル別価格弾性
 次は、チャネルの特性である。
 コーラの例で前述したように、まったく同じ商品であっても、
さまざまな購買機会、消費機会といったオケージョンが想定されるので、
顧客や消費者の購買条件も大きく違ってくる。
 ある販売チャネル、たとえば、地元商店街の生業店は、
主婦の平日の買い物という購買パターンに対応しているため、
価格を少しくらい下げても大量に売るのは難しい。
 逆に、あるカテゴリーキラー・ショップは、
自家用車で家族連れで来店する顧客が全体の七割を超えており、
大口ロットのディスカウント商品が飛ぶように売れたりする。
チャネルの規模、商圏の大きさ、品揃え、ロケーションなどが購買パターンにリンクして、
それが価格弾性に大きな影響をもたらしているのだ。
 同一の顧客であっても、さまざまな購買パターンを使い分けているが、
同時に、顧客に固有の価値観、購買要因という切り口も存在する。
同じ商品カテゴリーであっても、顧客によっては価格感度が高かったり、
ブランドに対する感応度が高かったりするのだ。

>>    調査・実験情報から価格弾性を把握する
 では、実際にはどのように価格弾性を把握するのか。
これには、アンケート調査などによる情報収集と、
複数の価格を提示する実験による情報収集の二種類がある。
 価格の絶対値、つまりディスカウントの収益インパクトや、
一部の顧客に特別価格で提供する際の自由度などに応じて、
方法を選ぶ必要がある。
たとえば、価格は変動して当たり前とはいえ、
乗用車でディスカウントの実験をするのは難しいし、
金融商品で実験するのも抵抗が大きいだろう。
 しかし、価格弾性を見きわめても、
それを施策に生かし収益に貢献できなければ意味がないので、
何を実施するかをまず考えなければならない。
たとえば、ある程度のディスカウントを実施して販売量を増やすことが目的であれば、
その額を決定するにあたって価格弾性値が必要になる。
 メーカーであれば、季節の需要変動の影響をあまり受けない同じ時期に、
いくつかの小売店で異なる価格による販売を実施して、
結果を比較してみる方法がある。
小売店であれば、やはり大きな季節格差のない時期に異なる価格で販売してみればよい。
この方法を用いれば、データと理論に終始するよりも効果を確かめることができるし、説得力もある。

>>    価格とリベートをめぐる確執が利益の減少を招いている
 価格とリベートをめぐる確執が、世界中のさまざまな企業で起こっている。
石油業界と飲料業界でまったく同じ問題が観察され、
価格弾性と売上げの最適点とを組み合わせた同一のグラフを使っていたりするのである。
 たとえば、オーストラリアのガソリンスタンドのプライシングである。
ガソリンスタンドには、コンビニエンスストアの売上げが相当額あるので、
低価格のガソリンを目玉に顧客を取り込み、
ガソリンで損した分をコンビニエンスストアの売上げでカバーするというシナリオが成り立つ。
 ところで、元売りの石油会社にしてみれば、
儲けが吹き飛んでしまうほどの安値でガソリンを販売され、
なおかつディスカウントの一部を負担させられるのだからたまらない。
かといって、ディスカウントをいっさい実施しなければ、競合他社にシェアを奪われてしまう。
 石油会社は、プライシングの実態と両社の儲けを明らかにして、
ウィン-ウィン関係になるようガソリンスタンドの経営者を誘導すればよいのだが、
自らの財務内容を開示せず、相手から信用されない。
販売会社に対するメーカーの立場が危うくなる、とかたくなに拒絶している。
 日本の食品業界でも、販売量を増やしたいメーカーが、
販売店に思い切った値下げをするようなプログラムをぶつける。
販売店はそれを受け入れて値下げに踏み切るが、
急激に販売量が増えるわけではない。
価格弾性の高いところでディスカウントを実施すればよいのだが、
多くの販売会社は、付き合いの深い小売店を中心に頼み込む。
これが量を求める購買パターンと関係のないチャネルであれば、
ディスカウントで売り値が下がるのに販売量は増えず、
結局メーカーの利益は大幅に減少する。
さらに悪いことに、販売会社には卸値を下げた在庫が積み増すために、
翌月の発注量が極端に減り、メーカーの利益減少がさらに長引いてしまう。
 このようなキャンペーンが続くと、小売店はディスカウントが頻繁に実施される
月末に、発注を集中させる。
メーカーも販売会社も、特に利益が増えるわけでもないのに、
慣習的に月末にディスカウントを実施し、
月末にやや伸びる売上げに一喜一憂する、
という笑い話のような本当の話になっている。
 最初から価格弾性値の高いチャネルやタイミングを選んで
プロモーションを実行すれば、このようなおそまつな結果にはなりようがない。
価格を下げることによってボリュームが増える商品に限定してプロモーションを展開し、
その結果を透明にして利益を分け合えばよいのである。

「プライシング」について

JUGEMテーマ:ビジネス書

 第5章 プライシングの分析手法を理解する

☆価格弾性
>>>    価格変動と需要の関係を測る
第二の分析手法は「価格弾性」である。
価格の変動に対して需要はどのくらい弾性的なのか。
あるいは硬直的なのかを表す価格弾性値は、
教科書に必ず登場するプライシング関係の定番である。
 ここで、現実の世界を考えてみよう。
プロダクト・マネジャーであるあなたは、
おそらく、そのような時間とコストをかける余裕はないだろう。
また、これまでの事例で見てきたように、
顧客の値ごろ感や競合他社の反応も含めて市場は刻一刻と変化しており、
調査によって把握した価格弾性値は、たちまち過去のものとなってしまうリスクも存在する。
 ここでは、これまでの経験をもとに、
現実にできること、また、特に犯しがちな間違いを防止するという観点から、
モノ、サービスの特性、チャネルの特性、
および顧客セグメントの特性による価格弾性の違いについて理解したうえで、
簡単な価格弾性実験の方法とリベートの使い方の間違いについて取り上げる。
>>>    商品別価格弾性
 価格弾性が、商品の特性によって大きく異なることは自明であろう。
その商品カテゴリーの主要な購買要因が、
価格なのか、ブランドや性能・品質なのかによって、
価格による需要の変動は違ってくる。
ただし、購買要因が価格であれば弾性値は高く、
価格でないならば弾性値は低いというような、単純なものではない。
注意しなければならないのは、企業によってまったく意味合いが異なることだ。
 たとえば、主要な購買要因が価格の場合、
当然、競合他社は価格の低さで競争をしている。
ここでは価格にクリティカルマスが存在していることが多い。
つまり、顧客がすでに低価格に値ごろ感を形成しているために、
ある価格以上ではまったく相手にされない「境界価格ゾーン」が存在する。
 その境界価格ゾーン周辺で低価格の商品が
入れ替わり立ち替わり販売量のトップの座を占めるため、
トータルで見れば大きなシェアの変化はないケースが多い。
逆に、境界価格ゾーン周辺で華々しいボリューム増を狙うのであれば、
下げ幅が目立つような価格を設定しなければならない。
よほどコスト競争力に自信がなければ選択できない行動である。
そうではない企業は、ただでさえ薄い利益をさらに失ってしまう危険性が高いので、
やめたほうがよい。
 ブランドや性能・品質といった購買要因が重要な商品カテゴリーの場合は、
通常価格で勝負しているわけではない。
低価格のプライベート・ブランドなどは、
ブランドなどをあまり気にかけない顧客をつかんでおり、
低価格にしたからといって、このような顧客のボリュームが大きく膨らむとは考えにくい。
 一方で、ブランドや性能・品質に優れた商品は、
通常価格が高い分、顧客は少額のディスカウントにも大きな反応を示すことがある。
ブランドなどの価格に対する割安感が、購買を刺激するのだ。
 価格で勝負する必要性が低い企業ほど、
実は価格を有効に使った戦略を立案できるのである。
>>>    チャネル別価格弾性
 次は、チャネルの特性である。
 コーラの例で前述したように、まったく同じ商品であっても、
さまざまな購買機会、消費機会といったオケージョンが想定されるので、
顧客や消費者の購買条件も大きく違ってくる。
 ある販売チャネル、たとえば、地元商店街の生業店は、
主婦の平日の買い物という購買パターンに対応しているため、
価格を少しくらい下げても大量に売るのは難しい。
 逆に、あるカテゴリーキラー・ショップは、
自家用車で家族連れで来店する顧客が全体の七割を超えており、
大口ロットのディスカウント商品が飛ぶように売れたりする。
チャネルの規模、商圏の大きさ、品揃え、ロケーションなどが購買パターンにリンクして、
それが価格弾性に大きな影響をもたらしているのだ。
 同一の顧客であっても、さまざまな購買パターンを使い分けているが、
同時に、顧客に固有の価値観、購買要因という切り口も存在する。
同じ商品カテゴリーであっても、顧客によっては価格感度が高かったり、
ブランドに対する感応度が高かったりするのだ。

>>>    調査・実験情報から価格弾性を把握する
 では、実際にはどのように価格弾性を把握するのか。
これには、アンケート調査などによる情報収集と、
複数の価格を提示する実験による情報収集の二種類がある。
 価格の絶対値、つまりディスカウントの収益インパクトや、
一部の顧客に特別価格で提供する際の自由度などに応じて、
方法を選ぶ必要がある。
たとえば、価格は変動して当たり前とはいえ、
乗用車でディスカウントの実験をするのは難しいし、
金融商品で実験するのも抵抗が大きいだろう。
 しかし、価格弾性を見きわめても、
それを施策に生かし収益に貢献できなければ意味がないので、
何を実施するかをまず考えなければならない。
たとえば、ある程度のディスカウントを実施して販売量を増やすことが目的であれば、
その額を決定するにあたって価格弾性値が必要になる。
 メーカーであれば、季節の需要変動の影響をあまり受けない同じ時期に、
いくつかの小売店で異なる価格による販売を実施して、結果を比較してみる方法がある。
小売店であれば、やはり大きな季節格差のない時期に異なる価格で販売してみればよい。
この方法を用いれば、
データと理論に終始するよりも効果を確かめることができるし、説得力もある。

>>>    価格とリベートをめぐる確執が利益の減少を招いている
 価格とリベートをめぐる確執が、世界中のさまざまな企業で起こっている。
石油業界と飲料業界でまったく同じ問題が観察され、
価格弾性と売上げの最適点とを組み合わせた同一のグラフを使っていたりするのである。
 たとえば、オーストラリアのガソリンスタンドのプライシングである。
ガソリンスタンドには、コンビニエンスストアの売上げが相当額あるので、
低価格のガソリンを目玉に顧客を取り込み、
ガソリンで損した分をコンビニエンスストアの売上げでカバーするというシナリオが成り立つ。
 ところで、元売りの石油会社にしてみれば、
儲けが吹き飛んでしまうほどの安値でガソリンを販売され、
なおかつディスカウントの一部を負担させられるのだからたまらない。
かといって、ディスカウントをいっさい実施しなければ、競合他社にシェアを奪われてしまう。
 石油会社は、プライシングの実態と両社の儲けを明らかにして、
ウィン-ウィン関係になるようガソリンスタンドの経営者を誘導すればよいのだが、
自らの財務内容を開示せず、相手から信用されない。
販売会社に対するメーカーの立場が危うくなる、とかたくなに拒絶している。
 日本の食品業界でも、販売量を増やしたいメーカーが、
販売店に思い切った値下げをするようなプログラムをぶつける。
販売店はそれを受け入れて値下げに踏み切るが、
急激に販売量が増えるわけではない。
価格弾性の高いところでディスカウントを実施すればよいのだが、
多くの販売会社は、付き合いの深い小売店を中心に頼み込む。
これが量を求める購買パターンと関係のないチャネルであれば、
ディスカウントで売り値が下がるのに販売量は増えず、
結局メーカーの利益は大幅に減少する。
さらに悪いことに、販売会社には卸値を下げた在庫が積み増すために、
翌月の発注量が極端に減り、メーカーの利益減少がさらに長引いてしまう。
 このようなキャンペーンが続くと、
小売店はディスカウントが頻繁に実施される月末に、発注を集中させる。
メーカーも販売会社も、特に利益が増えるわけでもないのに、
慣習的に月末にディスカウントを実施し、
月末にやや伸びる売上げに一喜一憂する、という笑い話のような本当の話になっている。
 最初から価格弾性値の高いチャネルやタイミングを選んでプロモーションを実行すれば、
このようなおそまつな結果にはなりようがない。
価格を下げることによってボリュームが増える商品に限定してプロモーションを展開し、
その結果を透明にして利益を分け合えばよいのである。


「プライシング」について

JUGEMテーマ:ビジネス書
 第5章 プライシングの分析手法を理解する
>>>  ☆ゲーム理論
>>>    危険性を減らして成功の確率を合理的に高める
 第三の分析手法は、「ゲーム理論」によるプライシングの検討方法である。
ゲーム理論は競合他社との関係において価格を大幅に改訂するなど、
大きなアクションを取る場合に有効である。
 ゲーム理論とは、複数の当事者(個人、チーム、企業、国など)が存在し、
それぞれの行動が相互に影響を及ぼし合う状況のなかで、
それぞれが結果として得るであろう効用に基づいて各当事者の行動を予測し、
自らの意志決定を導き出す、という考えに則っている。
ゲーム理論は、自分の行動が相手の行動や効用に影響を与える状況に広く適用できるため、
チェスや囲碁などのゲームから政治やビジネスまで、
意思決定を伴うさまざまな事象をゲーム理論のフレームワークで取り扱うことができる。
 たとえば、ある幹線道路沿いにガソリンスタンドが出店したとしよう。
周辺のガソリンスタンドのレギュラー・ガソリンの平均価格が100円であるとした場合、
新しいガソリンスタンドは、どのようなプライシングを選ぶだろうか。
仮に、平均より7円安い93円で顧客を独占できると目論んだとすれば、
はたして実際にそのとおりのプライシングを実施するだろうか。
 もし93円の定価をつけて他のガソリンスタンドが負けじと追随した場合は、
ディスカウントによって利益を減らすことになって、
当初期待していたほどには顧客を獲得できないかもしれない。
 逆にライバル店は、ディスカウントに全面的に対抗して利益を減らすより、
多少売上げを減少させてでも価格は維持すべきだと判断するかもしれない。
サービスを重視した高付加価値化によってある程度の利益が確保できるならば、
この地域市場においては、
単なる低価格戦略でいっきにボリュームを得ようとするガソリンスタンドは、分が悪いかもしれない。
 このように、事業におけるわれわれの選択は、
そこに参加する他の企業の出方次第で、
自社の意図とはまったく異なる決着がもたらされる危険性をはらんでいる。
この危険性を少しでも減らして、合理的に成功の確率を高めることはできないものだろうか。
 この疑問に応えようとしたのが、ゲーム理論なのである。
ここでは適用方法と適用例を簡単に紹介する。

>>>    ペイオフ・マトリックス
>> 適用方法として、単純な二者間のゲーム理論を説明しよう。
 まず、縦軸にA社が選択しうる戦略を並べ、横軸にB社が選択しうる戦略を列挙する。
次に、各社の戦略の数だけ行と列を描き、
起こりうる状況の数だけ升目をつくる。
それぞれの升目はA社とB社の戦略の組み合わせであり、
実行された場合に両社が得る効用を記す。
効用とは、シェアであったり、粗利益であったり、営業利益であったりと、
意思決定をしようと臨んでいる戦略そのものの目的関数である。
この升目の表がペイオフ・マトリックスだ。
 それぞれの効用を吟味すれば、採択すべき戦略を客観的に議論できる。
仮にA社が戦略1を選んだ時、B社も戦略1ならばA社のシェアは60%、
戦略2の場合は同50%とする。
 A社が戦略2を選んだ時、B社が戦略1ならば同30%、
戦略2の場合は同70%とする。
 次に、A社の立場に立って考えてみる。
最大シェアはA社が戦略2、B社が戦略2を選択した時の70%である。
しかし、A社が戦略2の時、B社が万が一戦略1で対応してきたら、
最小のシェア30%になってしまう。
このような時は、最悪の場合でも(つまりB社がいかなる戦略を取ろうと)
いくらかのシェアが取れる戦略を選ぶのが常道である。
 ゆえにA社は、ペイオフ・マトリックス上で
各行(各戦略の正の効用)の最小限(50%と30%)のうち、大きいほうを選ぶ。
それは戦略1であり、B社が戦略2で応じれば50%、戦略1であり、
B社が戦略2で応じれば50%、戦略1ならば60%のシェアが取れる。
これをB社の立場から見ると、
最悪の場合でもできる限りダメージの小さな戦略を選ぶには、
各列(各戦略の負の効用)の最大値(60%と70%)のうち、小さいほうを選ぶ。
それは60%で戦略1である。
 したがって、両社ができる限りシェアを守ろうとすれば、
ともに戦略1を選択することが理に適っていることがわかる。
これがペイオフ・マトリックスを使った競合の行動の考え方である。

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